雨のリフレイン
「さてと。
水上先生はCT検査室に行って下さい。呼び出しがありました」

柊子から視線を外し、洸平は山田師長の言葉に耳を傾けた。

「わかりました。ありがとうございます、山田師長」



洸平は検査室に向かう。
すると、検査室の前で、思いもかけない人物に会った。


「一条先生!」


そこにいたのは、翔太の父でこの光英大学病院の病院長、一条だった。白衣姿で何かを待っている様子だ。

「あぁ、水上先生。待っていたんだ。これから三浦教授の検査があるんだ。
君、一緒に立ち会ってくれないか?」
「え、三浦教授の検査?
私みたいな若輩者が立ち会ってよろしいのですか?」
「あぁ。翔太よりずっと信頼できる。
それに、娘さんが君を慕っているそうじゃないか。
君には愛妻がいる事は公然の秘密だそうだが、今日だけは、ちょっと大目に見てくれ」


なんだか、嫌な予感しかしない。


一条と共にモニタールームに向かうと、ちょうどこれからCTを撮るところだった。

「病院長、わざわざご足労頂きありがとうございます」

そこには、三浦香織がいた。

「あら?水上先生?」

洸平が一緒に来るとは思っていなかったようで香織は驚いている。

「あぁ。私の助手だ。若手のホープにも、見てもらおうと思ってね。さぁ、始めてくれ」




CTの機械がゆっくりと動き出す。



モニターに映像が映し出された。
しばらく黙って三人はモニターを見つめる。


「…っ!」

香織が息を飲む。一条も洸平も、言葉にしない。
だが、言葉など無くても、画像ははっきりと現実を映し出していた。


洸平は、机上にあった他の検査の結果に目を通す。

「三浦教授には、伝えますか?」
「父には、検査結果は全て自分に見せるようにと言われています」







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