雨のリフレイン
「水上先生、どうしたんですか?
あ、どら焼き見て、急にお腹空いたの思い出した?」


食事時ではないので、食堂はガランとしていた。


「あら、柊子ちゃん」


職員しか利用しない食堂だが、柊子はしばしば母と食べさせてもらうので、食堂のおばちゃんとは顔見知りだ。


「こんにちは!
そういえば、この間教えてもらった煮物のレシピ、やってみました!はちみつなくてお砂糖使ったら、なんかイマイチで。
また、今度はちみつでやってみます!」
「うん、うん。
柊子ちゃんは、お料理上手になりそうねー。
水上先生、今度、食べさせてもらったら?
研修医は皆、ロクな食生活してないもの」


食堂のおばちゃんにからかわれて、柊子は顔を赤らめるが、水上はどこ吹く風。



水上は、食堂奥の自動販売機で飲み物を二本購入すると、窓際の、周りに誰もいない席に柊子を座らせた。
トン、と柊子の前に缶が置かれる。
それは、柊子がいつも飲んでいるミルクティーだった。水上が柊子の好みを知っていることがなんだか嬉しい。

「ありがとう、水上先生」

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