雨のリフレイン
「赤ちゃんが、私を、救った…?」


そうだ。
あの時、お腹を蹴ってこの子は私に勇気をくれた。不安で押しつぶされそうな心を奮い立たせてくれたのは、この子だ。


「そう。救ってくれたんだよ。
だから、今度は赤ちゃんのためにも、早く元気にならなくちゃね。前を向いているんだよ。あの時のように笑顔でね。
立派な看護師さん。次は立派なお母さんに」


「……ありがとうございます」


柊子の目から、ポロポロと涙がこぼれた。


「先生が、旦那さん?あなたも命を救う立派な仕事だが、今は奥さんを一番に。素晴らしい女性だ。大事にしておやりなさい」


「…はい。…ありがとうございます」



洸平は、静かに彼女に深く頭を垂れた。
彼女の言葉が、深く二人の心に響く。
不思議と言葉一つで、痛みも苦しみもスッと消えていく気がした。

言葉にすることの大切さを、痛感した。











< 281 / 302 >

この作品をシェア

pagetop