雨のリフレイン



「八坂さんの娘さん、かな?」

看護師に案内された父のベッドの周りは多くの機械に囲まれていた。

そこに、男の医師がいる。
スラリとして、彫りの深い、いわゆるカッコいい部類に入るだろう、まだ若い医師だった。
その若さに、少し不安がよぎる。
この人で大丈夫なのかと。



「僕は、水上(みずかみ)です。
八坂さーん、娘さんが来たよ」


水上医師が父に声をかけるが、父はピクリとも動かない。


「娘さん、名前は?」
「柊子です。八坂柊子」


「八坂さん、柊子さんだよ」


名前で呼びかけるが、やはり反応はない。


「柊子さんも、呼びかけてみて」
「お父さん?
どうしちゃったの、お父さん」


柊子が声をかけると、父の頬がピクリと動いた。


「うん、いい。
そうやって、話しかけていて」
「話っていっても…
私、最近お父さんとはあんまり口聞いてないんですよねー。
しかも、寝てるのに話しかけたりしたら、うるさいって言われそう」


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