雨のリフレイン
そんな洸平に、翔太が言った。

「うちの親父は、っていうか、“一条”はお前の腕をかっている。三浦だろうが誰だろうが、ほかの奴がなんと言おうと“一条”には、お前の力が必要だ。
安心しろ」

「…すごいじゃない、洸平くん。
翔太先生のお父様…光英大学で一番の先生が認めて下さってるなんて、すごいわ。
三浦先生の気持ちもわかるわね」


信子は、純粋に褒めてくれている。
翔太の言葉の本当の意味も知らず。


翔太は、名家としても名高い“一条家”の一員だ。
一条家は創設者一族として、現在も光英学院の運営にも携わっている。

現在、日本経済の中枢を担う“一条グループ”。
翔太の父は現当主の弟で一条利周(としちか)。
光英大学病院の実質トップに君臨し、病院の絶対的存在だ。
その一条教授は、現在、横浜に構えることになった新しい医療センター作りに奔走している。今回、翔太が救急病院に行ったのも、その為の修業だ。

翔太からは、新医療センターに誘われている。
水上も、新医療センターには興味がある。翔太とも一緒に働きたい。

しかし、どうしても引っかかるものがあり、“行く”とはっきり返事できずにいた。

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