恋叶うオフィス
映画館は混んでいたけど、一番後ろの端の席を確保できたので、私たちは安堵した。


「前のほうじゃなくて、良かったよね」

「うん、前だと首疲れちゃうものね。武藤……」

「ん、なに?」

「大丈夫?」


なんか無理して明るく振る舞っているように見えた。彼の顔を覗き込むようにして見ると、瞳を揺らした。

それから、恥ずかしそうに頬をぽりっと掻く。


「あー、渡瀬は鋭いよな。いや、母さんに仲良く買い物する男性がいたのを知らなくって、ちょっと動揺した」

「そう。でも、優しそうな人だったね」

「うん、あとで詳しく聞いてみるよ」

「なんの力にもなれないかもしれないけど、困ったこととかあったら、話してね」


武藤はいつも穏やかでニコニコしているから、苦しい時や悲しい時の感情が分かりにくい。たまに弱々しい顔を見せるくらいだから、なにかあれば力になりたい。

話を聞くとこしかできないかもしれないけど、少しでも彼の気持ちに寄り添えたらいいなと思う。

武藤は小さく「ありがとう」と言って、微笑んだ。
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