恋叶うオフィス

「武藤課長、香水変えたんですか？ 素敵な香りですね」


まさか武藤本人に話し掛けるとは思いもしなかった。しかも、百々子ちゃんが話すと同時に近くにいた人たちまでもが武藤に群がって、鼻を動かすという異様な光景になった。

先月、私が同じように好奇な目で見られたことを思い出す。

武藤は呆気に取られた顔をしたが、すぐに答えた。


「よく気付くね。アロマ系の香りらしくて、気に入っているんだ」

「らしいって、ご自分で買われたのではなく、プレゼントとかなにかでもらったんですか？」


百々子ちゃんの鋭い返しに武藤は一瞬たじろいだけど、平然とした顔で頷いた。その瞬間を見た人たちが次々に疑問を投げ掛ける。


「どんな関係の人からもらったんですか？」
「もしかして、彼女からですか？」
「ええっ？ 武藤課長、彼女いるんですか？」
「彼女じゃなくて、まさか婚約者とか？」


突然の質問攻めに武藤は目をぱちくりさせてから、困った表情で笑った。


「なんで、彼女か婚約者となるの？ 友だちからもらったのに」

「そのお友だちは、女性ですか？」