恋叶うオフィス
「だから、武藤は邪魔するなよ」

「邪魔もなにも、渡瀬の気持ちの問題だろ?」

「だからー、お前は余計なことを言うな。決めるのは渡瀬なんだから」

「そんなの分かってる。でも……」


武藤は「でも」のあとに続く言葉に詰まった。私と宇野くんはなにが言いたいのかと彼を見る。

宇野くんはイライラした様子で、武藤に鋭い視線を向けた。


「武藤は一生独身でいるつもりなんだろ? それを貫くなら、ちゃんと貫けよ。俺は渡瀬を幸せにしたい、渡瀬と幸せになりたい。そういう気持ちで申し込んだから。なあ、渡瀬。一週間あれば答えを出せる?」

「一週間……。うん、お盆休み前までに返事をするね」

「いい返事を期待してる」


一週間後には夏期休暇になる。休みを悩みながら過ごさないですむように、返事をそれまでにしよう。

宇野くんが出ようとしたので、私も一緒に出ようと立ったが、武藤に腕を掴まれる。


「ちょっと、一昨日の件で相談がある。いい?」

「ムーンパークの件? うん、いいよ」


隣で話すより向かい合ったほうが話しやすいからと、私は向かい側に座り直した。

宇野くんは「またな」と出ていく。
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