彼は高嶺のヤンキー様6(元ヤン)
「瑠華さん。」
「なーに!?あたしみたいなエロババアにまだご用ですかぁー!?」
「いや、瑠華さんはきれいなお姉さんですよ?」
「そんなこと言うために、引き止めるわけ?」
「いえ・・・聞きたかったことが・・・」
「なに?」
「なぜ、神城さんではなく、僕にデータを渡してくれたのですか?」
「いらないんだったら、返してくれる?」
「返してと言うなら、返します。」
手を差し出してくる相手に、しまったUSBを差し出しながら伝える。
「ウソよ。」
そんな私にクスッと笑いかけると、差し出した手を上へ・・・背伸びしながら言った。
「坊やにあげる。それでいいじゃない?」
「でも・・・」
「あなたには渡す機会があったけど、あいつにはなかっただけよ。」
「向かい合って、話し込んでいたのにですか?」
「細かい男は嫌いよ?」
「・・・わかりました。しつこく聞いて、すみませんでした。」
「良い子ね。じゃあ、ポッケにないないして?」
その言葉通り、再びポケットにUSBをしまった。
「それでは、僕はこれで―――――――――。」
「坊や!」
「はい?」
呼ばれて、瑠華さんを見る。
一瞬、彼女の表情が、先ほど、神城さんにすがろうとした時の物と重なる。
(え?)
「――――――――――なんでもないわ。」
(え!?)
「なんでもないわ。」
「そ・・・そうですか・・・。」
何か言いたそうな気がしたけど・・・
「またね。おやすみ!」
「はい、おやすみなさい・・・。」
ニコッと笑って手を振ると、足早にマンションの中に消えてしまった。
間違いなく瑠華さんは、『なにか』を言いかけた。
でも、言う意思がなくなったから言わずに去ってしまった。
それがなにか、私にはわからない。
この先、彼女がそのことを話してくれるかわからないけど―――――――――
「聞かなくても問題がないならいい・・・。」
(なにもなければいいけど・・・)
そんな思いで、1人、つぶやいた時だった。