最後のキスが忘れられなくて
幼なじみとの恋
私は岸本良菜(らな)。

幼なじみで同僚の小田周一と晴れて恋人同士になりかれこれ半年経った。

昨夏の終わりに付き合っていこうと意思表示されて

今までのふざけ合いみたいな仲ではない本物の恋人として

私を見てくれるようになったことで

周一の新しい面を知ることになった。

それは幼なじみではなく異性として見てほしいと言われたことに

自分も愛される女性として成長していきたいと思う元になった。

彼になってもらえた喜びに舞い上がっていたのも事実だけれど

最初は戸惑いがあった。

昨日までは幼なじみの単なる友達同士な雰囲気でいて

今日からは恋人同士の関係に変えられるかといったら

私には正直言って無理があった。

いきなりキスできないし(実際はいきなりキスしまくられたが。)

今さら手をつないで歩くことにも抵抗があった。

気恥ずかしさや変な緊張感や間があって

こんなで本当に恋人なのかと疑問がわいた。

もちろん彼のことは心から好きで

抱きしめてもらえる日を夢見ていたし

キスも何もかも奪ってくれたらという思いは前からあった。

但し周一が数多い女友達と一体どういう付き合いをしているのか

常に心に引っかかるものがあって聞きにくい状況もあった。

そこは周一が心得ていて

そんなものは何でもないものであって

特定の誰かと特別な関係でもなく

まして恋人と言えるような対象はいないと断言していた。

その真偽は別として

いわゆる遊び相手や飲み友達とは別に

私を恋人に選んでくれた周一の気持ちを

決して無駄にしたくなかったが

あと1ヶ月で私は退社し日本を離れる。

そのことを周一にはまだ話していなかった。

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