闇色のシンデレラ
「おいしいでしょ。ちょっとは落ち着いたかしら」

「はい、ありがとうございます」



お茶をいただいて、紘香さんの笑みを癒されて、だいぶ緊張が解けてきた。



「ふふ、それにしても……志勇もあんな締まりのない顔するのね。
冬磨みたい」



湯呑みを持ちながら嬉しそうに顔を綻ばせる彼女。


志勇が組長さんみたいって、どこがだろう。


てか、組長さんも志勇みたいに笑うの?


あの威圧的な怖いオーラからはとても想像がつかない。



「冬磨と顔はあんまり似てないんだけど、笑ったらそっくりなの。不思議よね。
やっぱり親子って似てくるものみたい」

「あ……雰囲気も、似てると思いました」



そう言うと彼女は表情を少しいたずらっぽい笑みに変えた。




「そうでしょ、颯馬はわたし似って言われけど、志勇は年々冬磨に似てきてるのよね。

人一倍独占欲が強くて、どれだけ寄り添って、どれだけ愛情を注いでも愛に飢えてる。
物にも人にも、自分のものだってマーキングしておかないと気が済まない。

でも、これまであの子は色事に関しては来る者拒まずの去る者追わずで、ひとりの女の子に執着なんてしたことがなかった」





志勇の性格を的確に言い当てる紘香は、子ども想いの優しいお母さんだと思った。




「そんな息子が『シンデレラ』と呼ばれる女の子に惚れ込んでるって噂を聞いてね。
その子に会いたいって、ずっと思っていたの」



彼女がわたしを知りたいと思っていたなんて、驚きだ。


正直、志勇はわたしに執着してるだけで、惚れてるかどうかは分からないし、彼が注いでくれる愛情というものに、どう答えたらいいのか分からない。




「だから今日がすごく楽しみだった。来てくれてありがとう」



だけど目の前にある彼女の笑みに閃いた。


ありがとうの言葉に重みと、笑顔の重要性。


わたしも紘香さんみたいに、ちゃんとありがとうって言って、笑える人間になれるように努力しよう。


それが志勇にとって、わたしがしてあげられることだと思うから。
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