闇色のシンデレラ
「……ん?」



和やかなムードが流れる中、足音と気配を感知した。


振り返るとガラリ、襖が開けられた。



「あら、お帰りなさい冬磨」



予想通りそこに立っていたのは組長さんと志勇と司水さん。


先頭の組長さんはわたしに目もくれず、絋香さんを瞳に映すと、一直線に彼女の元へ。



「……絋香」



そして、座布団の敷かれた元の位置に戻るのかと思えば、後ろから彼女に抱きついた。


愛しそうに、切なげに、けれどごく自然に。


……わあ、何がいけないものを見てしまった気持ちだ。





「……帰るぞ」



まさに映画のワンシーンのような、絵になるお二方に見入るわたしを、ふっと我に返した志勇の声。



「え、もう?」



まだ絋香さんとお話したいわたしは思わずそう言ってしまった。


っていっても、組長さんと抱擁を交わされてるのならどっちにしろ無理か。



「志勇、帰るの?じゃあお見送りするわ」

「絋香、お前はここにいろ。俺から離れるな」

「……冬磨?」



立ち上がろうとすると、組長さんの低くうなるような声に彼女は首をかしげた。


怒っているの?


……志勇といったい、何を話したんだろう。


気になりながら、志勇に腕を引っ張られ立ち上がると、少し足がしびれてしまっていた。



「志勇、ちょっと待って」

「ん?」



声をかけて振り返らせると、心なしか、志勇の表情も曇って見えた。
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