闇色のシンデレラ
それからしばらくして、廊下を歩いていたわたしたちの後を追ってきた剛さん。



「ごくろうさま」

「きっちり叱っときました」



そんな彼に笑う司水さん。



「ふっ、まるで昔の志勇を見ているみたいですね」

「いや、若の方がすさまじかったすよ」



それに対し、即言い返した剛さん。



「ああ、あれのことですか」

「はい、お察しの通りそれです」



すると二人揃ってわたしに向き直す。


……わたし、何かしたっけ。



「あの、どれのことですか?」



分からなくて、恐る恐る訪ねてみたら、剛さんがこれでもかってくらい眉間にシワを寄せた。







「……眉毛っすよ」



眉毛?


確かに剛さんは眉なしだけど、眉毛と志勇にどんな因果関係が?


すると剛さんさんは一段と怖い顔をして、こう言った。




「昔、若に眉毛を燃やされたんす。寝てる間に」



……は?



「も、燃やされた!?」

「はい、それ以来、右だけ生えなくなって……仕方ないから全部剃ってるんす」

「ええ!?」



そういって、生えていない右の眉毛をさする彼。ああ、だから剛さんは眉なしなのか。


じゃなくて志勇、大事な側近の人になんてことを!


いたずらも度が過ぎてるでしょ。



「ふっ、お前も苦労しましたね」

「若はとんでもない悪ガ……イタズラ好きでした」



……とんでもない悪ガキ?


剛さん、口が滑りかけたよね。


我慢強くて忠誠心の固い彼がそんなことを言いかけるなんて、いったいあの人はどれだけの事件をやらかしてきたの。


それより、志勇ってイタズラっ子だったんだ。


いつもクールぶってる志勇がそんなだったなんて意外。


後で志勇にこのエピソードを話してみようかな。


志勇、どんな反応するだろう——だなんて、仲直りもしてないのに、心が浮き足だった。
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