闇色のシンデレラ
SIDE 司水



「へえ。志勇って、イタズラっ子だったんですね」

「イタズラなんて可愛いもんじゃないっすよ。あんな綺麗な顔して、寿命が縮むようなことを平気で仕出かすんで」

「そっか、そっかあ」



昔話を語るなり、ほのかに頬を紅潮させて、かすかに口角を上げる志勇の唯一。


初めて見る彼女の微笑みに胸が高鳴った。


普段笑わない人間が笑うと心持ち華やかになるが、目の前のそれは他人の比ではない。


心を根こそぎ持っていかれるような——この表現が正しいだろう。




今なら、分かる。


どうして志勇がこの娘を選んだのか。


俺が口にした『分かった気がする』というのは、彼女に対してのことだ。


見ず知らずの人の心を、俺の心に潜むわだかまりを氷解してみせた。


それは偶然だろうとそうでなかろうと、俺の境遇を通じて彼女の本性を暴くには十分だった。




「壱華様」

「はい」



しかし、隠された黒い部分を探そうと疑うどころか。



「姐さんのところへ、参りましょうか」




久しく感じていなかった慈愛に触れ、彼女に心を許してしまった俺は本物の馬鹿だ。


はっきりと告げると、彼女の大きな黒い瞳が、宝石のようにキラキラと揺れる。



「でも、組長さんといるって……」

「構いません、あなたなら」

「……いいんですか」

「ええ、ご案内します」



もし、彼女が誰のものでもなかったとしたら。


もし、この娘が『重要人物』でなく、ただの人の子だったら。


俺は間違いなく、志勇と同じく彼女を守ることに専念だろう。


それほど魅力的で、儚げで、芯の強い女だ。



志勇にふさわしいのは、本当に彼女なのかもしれない。
< 175 / 409 >

この作品をシェア

pagetop