闇色のシンデレラ
「もう、ごめんなさいね冬磨ったら。あんな野獣みたいに威嚇しなくてもいいのに」



彼らが出ていった後、緊張をほぐすように笑いかける紘香さん。


野獣みたいって、まるで裏の顔を見せた志勇を目の当たりにしたみたい。


そっか、組長さんが吐き捨てた言葉に聞き覚えがあったのは、志勇もあんなこと言うからかな。


やっぱり志勇は良い意味でも悪い意味でも父親似だ。




「そうそう、冬磨の背中にはね、金色のライオンが彫られているの」

「……ライオン、ですか」

「うん、それにちなんで造られたのがこの部屋。
名付けて金獅子の間、と呼ばれてるわ」



納得していると、紘香さんは顔をほころばせて組長さんのことを語る。


そういえば、この部屋には襖や天井など、至るところに和風の金獅子の絵が施されていた。




「ちなみに志勇の背中には狼が彫られてるみたいなんだけど、見たことはある?」

「あ、一度見せてもらったことがあります」

「そうなんだ、いいなあ。志勇ね、わたしにもあの狼をちゃんと見せてくれたことがないの。
そう……壱華ちゃんには、特別に見せてあげたのね」



天井から目を放すと、片手を頬に当てて嬉しそうな紘香さんが。


笑顔の彼女を見ればわたしも嬉しくなるけど——



「それで、今日はどうしたの」



不意に顔を合わせられ、彼女の視線に何か感じたわたしは姿勢を正した。



「志勇と何かあったんでしょう」



図星を差され、わたしの視線は次第に畳の目に下ろされる。



「顔を上げて」



だけど凛とした彼女の声に従うしかなくて、顔を上げた先に、わたしと同じく背筋を伸ばした紘香さんがいた。



「この部屋は、わたしと冬磨の部屋。限られた者以外は立ち入ることができない。
だから、今ここにいるあなたは大事なお客様よ。大丈夫、遠慮しないで話してごらん」
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