闇色のシンデレラ
「実はわたしもね、高校を卒業したら大学に行きたかったの」

「そうなんですか」

「うん、でも、高校を卒業してすぐ冬磨と結婚したから、結局大学には行かなかったの。
ごめんね、参考にならなくて」

「いえ、大学に進学するより、結婚に踏み切る方がよっぽど大変なのに……すごいです」

「ふふ、ありがとう。
そうね、わたしにとって、冬磨と過ごす時間が何よりも大事だから」



肩をすくめてはにかむ彼女は、旦那さんの話をするときが一番楽しそう。


相思相愛かあ、いいな。



「あら、勝手にノロケちゃってごめんなさいね。
つまり、あなたの頭の中で思い描いてるビジョンがあるっていうのなら、全力で応援するわ。
志勇もきっと、壱華ちゃんが大学に行っちゃったら独り占めできる時間が減るから嫌がってるだけよ」

「でも、わたしのことを思って言ってくれたのかもしれないと思うと……」

「ううん、自分のやりたいことはやるべきよ。
自分を曲げてまで、男の言いなりになることはないわ」

「でも……」



わたしの言葉はそこで止まる。


理由は絋香さんの表情に現れた違和感。


今まで輝いていた瞳が、なぜか少し暗く(かげ)っていた。




「過度な我慢は自分を殺す結果となる。
そうなれば、わたしのようになってしまうわ」




それから苦しそうな表情を一瞬つくり、抑揚(よくよう)なく言葉をつないだ。






「冬磨に出会うまで……奴隷のようだったわたしに」





「え……」



常に明るいはずの彼女の瞳に合間見えた、闇。


彼女がわたしと同じ闇を抱えていることを、わたしはこのとき初めて知った。
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