闇色のシンデレラ
「とにかく、安心したわ。壱華ちゃんがしっかりした子で。
心配していることなら大丈夫。
あなたが本気だって分かれば、志勇も分かってくれるから」



暗い表情を見せたけど、(もや)を振りはらって笑顔になる絋香さん。


弱い部分を見せない彼女はやはり極道の姐らしく強い人だ。



「絋香さん……」

「それでもだめなときはわたしを呼びなさい。
志勇を説得しに行くわ」



この人はいったいどれだけ情の深い人なんだろう。


感極まって畳に手をついて一礼した。



「ありがとうございます」

「こちらこそ。いつも志勇のそばにいてくれてありがとう」



……そんな、ありがとうだなんて。


わたしが志勇に感謝しなくちゃいけないのに。



「ところで……」



しかし、急に低くなった絋香さんの声に疑問に思って面を上げると、彼女はわたしをじっと見ていた。




「あなた、私のこと『絋香さん』って呼ぶのね」

「……はい」

「なんか嫌だなー、ずいぶん他人行儀じゃない?」




そんなこと言われても、相手は日本国民なら誰もが畏れる極道の妻だし。


どう呼んだら正解なのかもわかんない。


首をかしげると、絋香さんはぱあっと表情を明るくさせ——








「ねえ、じゃあわたしのこと『お母さん』って呼んでみて」






簡単に見えて、とても難しいことを要求してきた。
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