闇色のシンデレラ
「えっと……え?」



お、お母さん?



「お願い。ほら、子どもが2人とも男だから、娘にお母さんってかわいく呼ばれるのが憧れで」



そんな大役がわたしでいいの?


絋香さんをお母さんと呼べるほど親身な関係じゃないのに。


わたしはただの───志勇のお荷物なのに。




「壱華ちゃん?」

「……」

「……壱華」

「はいっ」



そう思うと、弱いわたしは視線を落としてしまう。


だけど賢い彼女に感じ取られたくなくて、呼び声に素早く返事した。



「壱華って、いい名前ね」



何を言われるか構えていたけど、予想していなかったことに肩の力が抜ける。




「わたし、好きな名前だわ。あなたによく似合ってる」

「あ、ありがとうございます」



なんだか、ずっとほめられっぱなしは照れくさい。


恥ずかしくなって目を泳がせながら絋香さんをチラリと一瞥すると、彼女は口角を上げて唇を震わせた。





「もし、わたしと冬磨の間に娘がいたなら、あなたのような子がほしかった。
だからあなたに会えたこと、本当に嬉しい」

「……っ」

「生まれてきてくれてありがとう。
志勇を選んでくれて、ありがとう」





わたしだって、わたしだってあなたのような人の子どもに産まれたかった。


そうすれば、愛情に飢えることなく純粋に育ち、どれだけ幸せだったことか。


けれど、育つ環境の中に十分な愛情に恵まれず、歪んでしまったわたしは素直に喜べない。


喜びたいのに喜べなくて、笑いたいのに笑えない。


……苦しいよ。
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