闇色のシンデレラ
自分の感情なのに自分で表現できなくて、汗ばんできた手を膝の上で握りしめた。


青白いわたしの手は小刻みに震えている。



「無理は、しないでいい」



そのとき、耳のそばで捉えた絋香さんの声。


顔を上げると目の前で静かに正座する絋香さんがいた。


彼女は少し苦い顔をすると、そっとささやい。



「あなたの周辺で起こった出来事は、勝手で申し訳ないけど、司水を通して教えてもらったわ」



つまり彼女は、わたしの生い立ちを知っている。


人として扱ってくれなかったおばさんと姉妹のこと。信じていた人々に裏切られ、黒帝に追われた悪夢のこと。


瞬きする度、脳裏をかすめる消えない残像。


フラッシュバックした深い闇に飲まれそうになった刹那に、体の一部が受け取った温かい感覚。


絋香さんがそっと、脂汗がにじむわたしの拳に、手を重ねていた。
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