闇色のシンデレラ
割れ物に触るように両手で包み込み、ゆっくりと視線を絡ませた彼女は、わたしを瞳に映し入れ——




「……辛かったね」



今までで一番優しい声で、だけども目は凛とした強い光を放ち、わたしを真正面から見てくれた。


何か熱いものが身体の奥を通っていく。




「すぐに忘れろなんて言わないけれど……。
これからはゆっくり時間をかけて、過去を乗り越えるために共に歩いて行きましょう。
独りではその力は(とぼ)しいけど、今は守る存在がいるのだから、決して難しいことではないわ」



彼女ほど強く優しい人がいっしょに歩んでくれるなら、これほど嬉しいことはない。


でも、わたしはあなたほど強くはない。





「人間は弱い生き物よ。わたしだって、冬磨に出会うまでは無力だった。
わたしはあの人がいたから困難に負けないでいられた。
守るものが存在するから、家族が在るから強くなることができた。

あなたもきっと強くなれる。
大丈夫、あなたはわたしによく似てるから」




彼女の言葉は魔法みたいで、なぜか鼻の奥がツンとした。


そっか、志勇がよく口にする大丈夫は、お母さんの口ぐせなんだね。


その魔法が闇に堕ちかけたわたしを何度助けてくれたことか。感謝してもし切れない。


そうしてひとひらの想いが、ついに言の葉となった。




「……さん」

「ん?」

「……お母、さん。ありがとう……」



ここに、わたしを認めてくれる人がいる。


多くを望まなくても結局はそれだけで十分じゃないかな。


だからわたしもちょっとずつ、少しずつでいいから、前に進んでいこう。
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