闇色のシンデレラ
「壱華……」



俺はお前に、伝えなきゃならねえことがあったのに。


俺たちが間違えていたと、光冴はあの女のコマにされていたのだと、謝りたくてお前を捜していたのに。


俺たちは、謝ることすらできなくなった。


俺たちは、無実の女を傷つけた罪人となった。



そして壱華は、この日を境に手の届かない闇に飲まれることとなる。


隠され続けていた出生の謎も、これから訪れるであろう危機も知らぬままに。



風は、それらを予兆するかのごとく吹き荒れていた。


まだ肌寒い3月の夕暮れのことだった。













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