闇色のシンデレラ
「やっ……」

「ん、どうした?」



思い出したと同時に記憶が駆け巡る。


たくさんの怒声と、バイクの轟音。


流れる血の色、わたしを殴る光冴の手と、氷のように冷たい理叶の目。



「いやあぁぁ!来ないで!」



全てがフラッシュバックして、かすれる声で叫んだ。


暴れて、もがいて、男から力ずくで離れようとした。



「落ち着け、大丈夫だ」

「やだ、殴らないで!」



無理やり抱き寄せられ、また殴られるんじゃないかと思って抵抗した。



「殴る?んなことしねえよ。お前を傷つける奴はここにはいない。大丈夫だ、壱華」

「あ……」




だけどわたしはそこで暴れるのをやめる。



『大丈夫だ、壱華』



その声を何度も夢の中で聞いたから。


暗闇からわたしを救ってくれた声は、彼から発せられたものだった。
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