闇色のシンデレラ
大人しくなったわたしに、今度は顔に向かって手が伸びてくる。


おばさんに平手打ちされたときのこと、光冴に殴られたときの残像が頭をよぎって、反射的にぎゅっと目を瞑った。



「……熱も下がったな。傷も化膿してない。さて……」



ところが、その手は優しく額に触れるだけで。


少し冷たい手が気持ちいい。


この手もしっかり覚えてる。


ずっと抱きしめて、なだめるように背中をさすってくれていた手。



反対側の手はズボンのポケットからケータイを取り出して、どこかにかけている。



「俺だ……ああ、目を覚ました。……あ?うるせえな、つべこべ言わずさっさと来い」



電話はすぐつながって、通話を開始する彼。


わたしはその顔をじっと見つめた。


すごく綺麗な顔。


初めて出会ったのに見惚れてしまうほど、魅力的な人。



「俺がことが分かるか?」



ぼーっとしてると、通話を切った彼が顔を合わせた。


びっくりしたわたしは目を逸らして首を横に振る。


すると彼は、淡々とした口調で声を聞かせた。
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