闇色のシンデレラ
「わたしはまだ、黒帝を許してない」



自分でもゾッとするくらい、抑揚のない怒りに満ちた声だった。



「信じてた人に裏切られる気持ちが、あなたたちには分かる?
証拠もないのに実莉を嘘を信じて、わたしは迫害されて殺されかけた。
一度裏切られた人をわたしが信用するとでも思う?」



冷淡に理叶と光冴を責める声は、まるで自分ではないみたいだ。



「顔を殴られて、腹を蹴られて、首を締められた。
まるで汚い物を見るような蔑んだ目で『お前には失望した』と突き放された」



淡々と無表情にあの日の記憶を掘り返す。


光冴は顔を悲痛に歪め唇を噛み、理叶は目を見開いてゆらゆらと視線を地面に向けた。


わたしが一番苦しんだはずなのに、どうして2人が辛そうな顔をするの?



「それがどれだけ……どれだけ、わたしを苦しめたことか」



冷静を保とうと震える声。


わたしは必死に言葉を繋いだ。




「……お願い、もう帰って。
あなたたちに従うつもりはない。こうやって話すこともきっとない。
わたしは志勇と生きていくから」



これでいいんだ。


聞き分けのない女だと、これで諦めてくれたらいい。


そうして、彼らに背を向けた。










「……壱華が『西の血を引く』としても、そう言えるのか?」








ところが、理叶が弱々しく発したフレーズにわたしは再び振り返ることとなる。
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