独占本能が目覚めた外科医はウブな彼女を新妻にする

「イチゴ、好きなんですか?」

樹さんがくれるのは、イチゴ味のキャンディーと決まっている。

「華が好きなんだろ?」

「えっ?」

「誠からショートケーキのイチゴをもらっていたよね?」

樹さんを招いて食事会を開いたのは、私が中学一年生のときだ。

勉強を見てもらった後、兄を含めた三人でショートケーキを食べたことは今もハッキリ覚えている。けれど少女時代のことを持ち出されては照れくさい。

「あれはお兄ちゃんが勝手にしたことで……。人のイチゴをもらうほど、いやしくないです」

「別に、いやしいとは思ってないよ」

唇を尖らせながら懸命に訴える私を、樹さんがクスクスと笑う。

そうか。私のためにイチゴ味のキャンディーを用意してくれていたんだ……。

初めて新たになった事実を知り、喜びで心が満たされていくのを実感した。

「うれしいです。ありがとう」

手のひらのキャンディーをキュッと握って樹さんを見上げる。すると風が吹き、髪がふわりと舞い上がった。

「そろそろ、戻るよ」

頬にかかった髪を、樹さんがすくい上げる。

指先の温もりを感じたら、離れがたい気持ちが胸いっぱいに広がり、気がつけば白衣の袖を掴んでいた。

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