独占本能が目覚めた外科医はウブな彼女を新妻にする
「悠太っ!」
小児病棟の前で私たちの帰りを待ちわびていた綾香さんが、こちらに向かって勢いよく走ってきた。
「ママ!」
腰を落とした樹さんの背中から悠太君が飛び降り、綾香さんときつく抱き合った。
離れ離れになっていた親子の再会はとても感動的で、胸が熱くなってしまう。しかしそれも束の間、綾香さんの大きな声が辺りに響き渡った。
「悠太! どうして勝手にいなくなったりしたの! 心配するでしょう」
悠太君の小さな肩が、ビクリと跳ね上がった。
突然、我が子がいなくなったら、親が心配するのはあたり前だ。でも悠太君が病室を抜け出したのには、きちんとした理由がある。
首を突っ込んでいいものか悩んだものの、黙ったままではいられなかった。
「悠太君、手術が怖かったみたいです」
「えっ……」
私を見つめる綾香さんの瞳がゆらりと揺れた。
「今回のことは、ひとりで外に出ていった悠太君に気づけなかった病院側にも責任がある。だから、あまり叱らないであげてくれないか」
「……」
樹さんにお願いされたら、もう厳しいことは言えなかったようだ。