独占本能が目覚めた外科医はウブな彼女を新妻にする
「ここが実家」
タクシーを降りて白い外壁と大きな窓が特徴的な家の前で、樹先生がにこやかに微笑む。
「それから病院はあそこ」
樹先生が指差す方向に視線を向けると、角を曲がった先に『桐島総合病院』という看板が掲げられた五階建ての大きな建物が見えた。ちなみに院長は樹先生のお父様だ。
いよいよ、ご両親と会うと思うだけで緊張が増してくる。
髪は乱れてない? メイクは落ちてない? 服にシワが寄ってない?
今になって細かいことが気になり、ソワソワしてしまった。
「さっきも言ったけど、なにかあったら俺がフォローするから安心して」
「はい」
手をキュッと握られる。
たったそれだけのことなのに、心が落ち着くから不思議だった。
「行こうか」
「はい」
瞳を細める樹先生に微笑み返すと、手を引かれてアプローチを進んだ。
「ただいま」
樹先生が玄関ドアを開ける。
しばらくすると、爽やかなブルーのシャツをピシッと着こなしたお父様と、上品な若草色のサマーセーターを着たお母様が姿を現した。
「おかえりなさい」
朗らかな笑みをたたえたふたりが、樹先生と私を出迎えてくれた。
気品あふれるご両親を前にして、緊張するなというほうが無理だ。
顔が引きつり、体が小さく震え出す。