同期のあいつ
「どうしたんですか?大丈夫ですか?」
「うん。急に仕事が入って病院へ戻らないといけなくなった。申し訳ないけれど、途中の駅まで送るからタクシーで帰ってくれる?」
「ええ、いいですよ」
そんなことならお安いご用。

「ここで降りましょうか?」
わざわざ駅まで送ってもらわなくても、ここからだって1人で帰れる。

「いいんだ。途中までは方向も一緒だし、3つ先の駅まで送るよ。あそこならタクシーも捕まりやすいし」
「わかりました」

時間もまだ9時過ぎ、電車でも十分帰れるけれど、言えば無理してでも家まで送ってくれそうで言えない。


「じゃあ、気をつけて」
「はい、ごちそうさまでした」
お礼を言って、私は駅の駐車場で別れた。

お医者さんって、休日でも呼び出しがあるのね。
やっぱり、大変な仕事だなあ。
そんなことを考えながら歩いていると、
ギュッ。
突然腕を掴まれた。

「キャッ」
出かかった悲鳴を手で塞がれた。

「バカ、大声出すな。俺だ」
現れたのは髙田。

「ど、どうして?」
なぜここにいるの?

「説明するから、行こう」
返事を待つこともなく腕を引かれ、私は髙田の車に乗せられた。

「俺んちに行くから。そこで話す」
私が聞くよりも早く、髙田が言った。

私は黙って着いていくことにした。
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