同期のあいつ
「俺と潤は小学校から高校まで同じ学校に通った親友だった。大学は別々になったけれど、遊び仲間なのは変らずで、お互いの彼女も交えてよく出かけていた。こいつとは一生付き合っていくんだと思っていたんだ。
でも、8年前すべてが変ってしまった。
その日、俺と潤と、お互いの彼女を入れて4人で出かけたんだ。
ちょうど雪の日で、道路も凍結していた。もちろん用心はしていたんだが、雪道に滑った車のコントロールがきかなくなり、スリップしたところを対向車のトラックとぶつかってしまった。
助手席に乗っていた潤と、その後方に乗っていた俺の彼女は無事だったが、運転席の俺が怪我をして、その後ろに乗っていた潤の彼女が亡くなった。
俺は人を殺してしまったんだ」

「えっ」
彼女の口から声がもれた。

「雪道でのスリップ事故だし、誰が悪いわけでもない。それは、俺だってわかってはいる。でも人が死んだんだ。
潤の彼女は、高校の同級生で、俺もよく知っている子だった。
事故の後、俺は病んでしまった。人の中にでられなくなって、引きこもりのようになった。それ以来、昔の俺を知る人間との連絡は一切絶ってきたんだ。
だから昨日、潤と会ったのも8年ぶり。本当に偶然の再会だったんだ」
嘘じゃないんだ、信じて欲しいと訴えた。

「わかった、信じるわ」

そう言うと、鈴木が俺を抱きしめた。

「私は髙田のこと、何でもできるスーパーマンだと思っていたわ。どんなに頑張っても私にはかなわなくて、そのことがいつも悔しかった。でも、違ったのね」

「ああ」

俺はそんな立派な人間ではない。
辛い現実から逃出してここに来た卑怯者だ。

「今までずっと辛かったね。1人で、苦しかったね」

背中をトントンと叩かれ、不覚にも目の前の景色が揺れた。


「でも、待って。白川さんとのことを知っているって事は、私のことも聞いたのよね」

「ああ」
今さら隠してもしょうがない。
「鈴木一華の素性も知っている」

「そうなのね」
寂しそうな顔をした。
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