同期のあいつ
「俺の本名は髙田じゃないんだ」
「へ?」

「髙田は母方の旧姓で、本当は浅井鷹文というんだ」
「浅井、鷹文?何で、どうしてそんなことを?」

「浅井の名前を隠しておきたかった」

そこまでして隠しておきたい名前って・・・

「ちょっと待って、鷹文の家って、もしかして、」
「そう、浅井コンツェルンだ」

うわ、それって・・・日本を代表する財閥。
うちなんかとじゃあ桁が違うじゃない。

「一華、大丈夫か?」

ブルブルと震えだした私の手を鷹文が包み込む。

「うん、平気だから。とにかく、全部話して」
小出しにされた方が心臓に悪い。

「父は浅井コンツェルンのトップ。俺はそこの一人息子として生まれた。大学を出たら浅井に入り、親父の後を継ぐんだと育てられたんだ。でも、二十歳の時、俺は・・・」
「そのことはいいよ」
辛すぎて聞いていられないから。

「完全に壊れてしまった俺を見て、両親も生きてさえいてくれたらいいと1度は諦めてくれた。直系は俺しかいないけれど、分家は多いし優秀な社員だってたくさんいるからな。でも、俺がこうやって元気になったのを知って欲が出たんだろう。やっぱり俺に継がせたいと言い出した」
「じゃあ、今回の件は」
「浅井からの圧力だ」

だから悠里さんは、『1度鷹文を元の場所に戻していただけませんか?』と言ったのか。
今さら、色んな事が納得できた。
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