同期のあいつ
「もう一つ聞きたいんだが、先週火曜日の晩は一華と一緒にいたのか?」
「え、ええ」

ん?
待て。
火曜日って言えば・・・

「君達は付き合っているのか?」
「いいえ、そのような事はありません。その日はたまたま」
「朝まで一緒にいた?」
「ええ。いや、そうじゃなくて」

マズイ。
俺とした事が誘導尋問に引っかかっている。
頭に浮かんだ大きな疑問。
そのせいで軽いパニック状態になっている。

「高田くん」
「はい」
「はっきり言っておくが、君と一華の交際は認めないよ」
「・・・」

なんとなくパズルがつながってきた。
鈴木社長。鈴木専務。鈴木一華。そういうことか。

「専務は鈴木一華の」
「兄だ」
はあ-、やっぱり。

「改めて昨日の事は礼を言う。本当にありがとう。でも、一華との交際を考えているのなら諦めてくれ。一華は見合いをさせてしかるべき家に嫁がせたいと思っている」
「仕事を辞めさせるんですか?」
「近いうちにな。元々一華が働く事には反対だったんだ。花嫁修業でもして嫁に行ってくれる事を望んだんだがね」
「もったいないですね。天職なのに」
「昨日みたいな目に遭ってもか?」
「それは・・・俺の責任です」
「どちらにしても、言って聞く子じゃないからな。もうしばらくは面倒を見てやってくれ。素性がバレるのを嫌がっているから、知らないふりで頼む」
「はい」

鈴木が社長の娘と聞いて色んな事が腑に落ちた。
ただ、それを聞いたからと言って俺の気持ちが変われる気がしなかった。
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