同期のあいつ
久しぶりに上がった管理職フロア。
社長室や専務室が並んでいる。

トントン。
「高田です」

「どうぞ、専務がお待ちです」
ドアが開き、そのまま奧の専務室に通された。

「失礼します」
「ああ、座ってくれ」
「はい」
幾分緊張気味に俺はソファーに腰を下ろした。

社長の息子で専務の鈴木孝太郎氏。
もちろん御曹司ではあるんだが、仕事もできる切れ者。
若くして経営陣に名を連ねたため、当初は反感も買ったようだが仕事ぶりと成果を見せつけて古株達を黙らせた。とにかくできる男だ。

「昨夜の事を君の口から聞きたいんだが」
昨夜って、鈴木の事だよなあ。

「昨日、鈴木一華に何があった?」
「えっと・・・」

どう説明するのが一番いいんだろうか?
彼女が傷つくような事は言いたくないんだが・・・

「真実が知りたいんだ。ありのままに頼む」
「はい」

俺は正直に話した。
本来1人では行くべきでない接待に1人で行ってしまったために起きた事。
薄々感ずいていて、それでも止めなかった俺にも責任がある事。
相手の部長の行動は犯罪レベルで、あと少し遅ければ大変な事になっていた事。
そして、鈴木がすごく傷ついている事。

「上司としての責任は私にあります。申し訳ありません」
一旦立ち上がり頭を下げた。

「君は悪くない。悪いのは相手の部長と、用心しなかった一華だ」
一華?

「あ、あの」
「君が助けに入らなかったらどうなっていたかと思うと恐ろしいよ。本当にありがとう」
「はあ」
何だろうこの違和感。何かが引っかかる。
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