同期のあいつ
結局断るタイミングを逃したまま、私は週末を迎えてしまった。

もちろん、その気になれば断ることはできた。
でも、そうしなかった。
気持ちのどこかに、高田といたい気持ちがあったから。

ピコン。

『近くのコンビニまで来てるけれど、出てこれる?』

「うん、今行く」
迷いはなかった。

家からコンビニまでダッシュで5分。誰にも会いませんようにと祈りながら走った。


「ごめん、お待たせ」
「全然待ってないから」
変わらずさわやかな高田がいた。

「さあ、どこ行こうか?」
カーナビを操作しながら、目的地を探している。

「無理したら、また足が痛くなるんじゃないの?」
「もう大丈夫」
「でも・・・」

「行くなら、映画か、ショッピングか、水族館か、美術館。って、お前と美術館ってイメージじゃないな」
「悪かったわねえ」

どうせ私に美術館は似合いません。

「怒るなよ。ほら、どこにする?」

うーん。
映画は座っていられるけれど、他はみんな歩かないと行けないし。
大勢の人が集まる映画館って、そんなに好きじゃない。
なんだか落ち着かなくて、集中できないから。

「映画見るよりも、DVDを借りて帰って家で見る方が好きなんだけれど」
「はあ?せっかくの休日を家で過ごしたいの?」

「うん」
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