となりに座らないで!~優しいバレンタイン~
 バーを一緒に出た堀野さんがニコリと笑った。いつものほんわりとした優しい笑みが、一段と優しくほほ笑む。


「良かったわね…… 広瀬社長、こんな面倒な事しなくても、大丈夫じゃないんですか? これからは…… ね?」


 堀野さんは、私を見てウインクした。


「えっ…… いや……」


 戸惑っているのは一也の方だ……
 


「じゃあね。おやすみなさい」

 堀野さんは手を振り去って行った。その先には、背の高い優しそうな男性の姿が見えた。



 二人を見送る私に、冷たい風が吹いた。


「ごめんなさい!」

 私は、一也に向かって声を上げた。


「何がだ?」


「だ、だって、みんなの前で…… どうしよう……」


 一也は、眼鏡を外しポケットにしまうと、髪の毛を手で軽く乱した。


 「あはははっ。」

 一也は、声を出して笑った。


「何が可笑しいのよ!」
 
 私が真剣に、困っているのに。



「いや、まさか友里が先に声かけてくるとは思わなかった。俺も連れ出すつもりだったから。全く、男に飲まされやがって」


 腰に回っていた、一也の手が私を引き寄せた。

 そして、素早く私の唇にキスをした。


< 113 / 125 >

この作品をシェア

pagetop