となりに座らないで!~優しいバレンタイン~
 あの二人の行動は、一般的に見て、おかしいであろう……

 次の日の午前中、二人で出かけていった。そして、昼過ぎに戻った二人は、大量の買い物袋を下げたいた。
 どんだけ買ったんだ!と、仕事でなければつっこみたい。
 広瀬様は満足な笑みで、彼女は少し呆れたような表情でエレベーターに乗った。広瀬様の、あのような笑みを、私は始めた見た。表情に血が通ったとでも言うのだろうか……


 まもなくして、広瀬様は一人でエレベーターから降りてきた。スーツに眼鏡姿の方の彼だ。いつもと変わらぬ冷静な足取り。だが、こころなしか暖かさを感じる後ろ姿に、私は「行ってらっしゃいませ」と声をかけた。


 そしてまたもや、面白い事が起きた。

 エレベーターからあの彼女が降りにてきた。私の挨拶より先に、「行ってきます」と、明るい声を上げ出かけて行った。

 まもなくして帰ってきた彼女は、なぜか炊飯器を抱えていた。
 そして、受付カウンターに置いた。

「すみません、預かって下さい」

 まあ、荷物のお預かりは珍しい事ではない。
 だが、しばらくして戻ってきた彼女は、持てるだけの持っていると言っていいほどの、ホームセンターの袋を下げていた。


「これもお願いします」

 また、行ってしまった。
 そして、また、荷物を抱えて戻ってきた。
 そして、また、出かけて行った。

 買ってきた物をマジマジ見るわけではないが、明らかに生活用品だ。確かに、広瀬様はこのマンションで暮らしていた。だが、どうやって生活していたのか?と聞いてみたくなるくらい、今日から生活始めますという様な生活用品だった。


 でも私は、広瀬様の生活が、やっとこのマンションで始まっていくような気がして、嬉しかった。
 自然と荷物を運ぶ彼女に手を貸していた。


「私、おかしいですよね?」

 そんな事を聞く彼女の姿を、素敵な人だと思った。
 私が思うのもおこがましいが、広瀬様をお任せして間違いはないだろう……




< 124 / 125 >

この作品をシェア

pagetop