となりに座らないで!~優しいバレンタイン~
 意外にあっさり、職人は見つかった。


 又、篠山の顔が見れると、受付の前を通ったのだが、篠山の姿は無かった。
 俺は、その場で崩れてしまいそうになるほど、ガックリと体から力が抜けてしまった。


 
 その夜、俺は真治のBARへ足を運んだ。

 「れいの女子社員には会ったのか?」

 「まあな……」

 「で、どうだった」

 「どうって? 疲れた……」

 俺は、ぽろっともれた言葉に、深くため息をついた。手にしていた、水割りのグラスをゆっくりと回し、形が変わる氷を見つめた。


 「なあ、真治。また、その女に会いたいと思わないか?」

 「…… ……」


 「抱きたいと思わないか?」

 俺の手から、水割りのグラスがズルっと落ちた。


 「素直になれ、バカが!」


 「うるせぇ!」

 俺は、もう一杯、水割りを飲み、店を出た。


 町ゆく女たちに目を向ける。
 軽く、引っ掛かりそうな女を見つけようと思ったが、どの女もみんな一緒に見える。
 俺は、どうしちまったんだろう?

 ふと、篠山の顔が目に浮かんだ。

 『抱きたいと思わないのか?』
 真治の言葉がリピートする。

 俺は、認めざる終えなかった……
 

 心の奥が、ジンと熱くなる思いを抱え、自分のマンションへと向かった。

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