となりに座らないで!~優しいバレンタイン~
 いつの間にか、駅のパーキングに停められていた社長の車に乗り込んだ。

 ハンドルを握る社長は、何も話さず前を向ている。

 沈黙が居心地が悪くて、思い切ってこっちから口を開く事にした。


 「あの……」


 「なんだ?」

  チラリとこちらに目を向けた社長の目は、なんでも言えと言っているように見えた。


「私なんかが、助手席に乗ってしまってよいのでしょうか?」

 私が座るべきではない場所に、落ち着かなくてたまらないのだ。


「はあ? じゃあ、後ろに乗るのか? 俺が運転手。あんたはお嬢様か?」


「へぇ? そっかあ…… プッ 」

 なんだか社長の言葉を創造したらおかしくなって、思わず噴き出したしまった。


「助手席でいいんじゃないのか? それとも、運転するか?」

 社長も、面白そうに顔を緩めて言った。


「いえいえ、運転は結構です。免許取ってから運転したことないので……」


「マジか…… そりゃ、こっちが遠慮するわ」

 社長が、胸に当てた手を撫でながら言った。

 社長と目が合い、お互い声を出して笑った。


 カバンの中で、スマホが震えていたが、気づかなかった。たとえ、気づいたとしても、電話には出なかったと思う。



 
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