となりに座らないで!~優しいバレンタイン~
「ど、どうしてここなんですかー!!」

 社長の車が停まったのは、今朝私が逃げたばかりのタワーマンションの駐車場だ。


「どうしてって、近所に旨い飲み屋があるんだ。嫌だったか?」


「い、いえ、そういう分けじゃあ。あははっ」

 てっきり、またマンションに連れ込まれると思った。


 社長は車から降りると、エントランスとは逆の方へ歩き出した。本当に、美味しいお店があるみたいだ。ちょっと嬉しくなって、足取りが軽くなる。



「ええ!! どうしてここなの?」

 社長が足を踏み入れたのは、昨日、たどり着いた公園だ。


「またかよ。どうしてって、公園突き抜けた方が早いんだ」


「そ、そうですか。この公園とマンションが近くだったんですね…… だから、昨日ここで会ったんだ……」

「何をぶつぶつ言ってんだ。ちなみに、あんたはこの入り口から出て、グルーと回ってあの入り口の前でウロウロしてたんだ」

 社長はグルーと指をさして言った。

「そして、俺はここで見ていた」

 社長は、ニカっと笑って言った。

 私の顔はカーっと赤くなって、恥ずかしさのあまり下を向いた。


 頭の上に、重みがかかりほわっと暖かくなった。社長の手が、私の頭を撫でたのだ。


「さあ、行くぞ!!」






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