となりに座らないで!~優しいバレンタイン~
「美味しすぎます~」

 私は、煮びたしを口に入れた頬を両手で抑えた。


「だろ?」

 社長も満足気に答える。

 焼き鳥を口に入れれば、肉汁がじゅわっと口に広がり、焦げ目の香ばしさがたまらない。


「どうぞ」

 と、奥さんがテーブルに置いたのは、雑魚のたっぷりのったサラダだ。

 社長が不思議そうに、奥さんに目を向けた。


「あんまり美味しそうに食べるから嬉しくなったみたい。うちの人からよ」

 奥さんが目を向けたカウンターを見ると、優しそうなご主人がにっこりとほほ笑んだ。

 私は、ペコリと頭を下げた。

 社長が、軽く手をあげると、奥さんがふっと笑った。


「広瀬さんが、女性の方と見えるなんて初めてなものだから、つい嬉しくて」

 そう言って奥さんが、あめ色に煮つけた大根の入った器を置いてくれた。

 社長の顔を見ると、少し赤くなった顔をプイっと横に向けた。


「あら、ごめんなさい。余計な事言っちゃった。ごゆっくりね」


 私は、大根を口にいれ「美味しいー」と、幸せを噛み締めた。

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