となりに座らないで!~優しいバレンタイン~
 スマホのアラーム音で目を覚ました。

 私の体は、広瀬さんの腕の中におさまったままだった……
 頭の上で、スースーと広瀬さん寝息が聞こえてくる。

 グーッと腕を伸ばし、サイドテーブルに置いたスマホに手を伸ばすが、広瀬さんはびくとも動かない。そういえば、寝起きが悪いと言っていた……
 しかし、スマホに目をやると、起きなければならない時間を示している。

 先に起きて支度をしたいのだが、昨夜クリーニングに出した洋服がどうなっているのか分からない……

 広瀬さんの腕を無理やりはがし起き上がった。

「おはようございます!」
 
 広瀬さん肩を揺らしてみた……

「うーーん」
 と、声を上げたが、又寝てしまう。


「起きて! 起きて!」

 仕方なく、大きな声を上げながら布団をめくって、広瀬さんを大きく揺らした。

 すると、広瀬さんの目があき、目が合ってほっとしたと同時に、頭に腕が伸びてきたと思ったら、そのまま唇が何かに覆われた。

 広瀬さんの唇だとわかるまでに、数分かかった。

 「う……んっ」

 なんとか、唇を離すと、広瀬さんの目がぼーっと私を見ている。
 寝ぼけてるのか?


「ク、クリーニングどこですか?!」

 声が上ずってしまった。


「ああ…… 玄関の外のラックに入っているはずだ」


 私は、一目散に玄関に向かった。
 心臓がバコバコ踊りまくっている。


 玄関の扉を開け、真っ赤に火照った頬を、冷たい風が沈めてくれた。


 あー!キスされーたー!

 理解してしまった瞬間、また顔が熱くなる。



 
 
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