となりに座らないで!~優しいバレンタイン~
「帰って下さい! 昨日メールしたはずです」

 私は、冷たい口調で言った。

「なんで、そんなに急に冷たくなるんだよ。俺達いい関係だったじゃんないか?」


「はあ? あなた結婚しているんですよね」

「それが、どうした? そんな他人行儀なしゃべり方するなよ」


「もう、私はあなたに会いたくないの! 帰って!」


「なあ、怒っているのか?」

 野村の目が、急に鋭く変わった。背筋に冷たいものが走る。


「当たり前でしょ……」

「俺達の事誰かに言ったか?」


「はあ?」

「俺にも立場ってものがあるから、後で騒がれると困るんだよ」
 
 何を言っているのだ、この男は……

 
「とにかく帰って!」

 野村が玄関への扉へと近づいてきたので、帰ると思い気の緩んだ瞬間、腕を強くひっぱられた。

「玄関で騒ぐな! 中に入れ!」

「嫌!」

 外に出ようとするが、男の力には勝てない。
 

 扉が閉まる瞬間、体が浮いて、もう一度外にひっぱられた。



「誰だあんた?」



 野村の怪訝そうな目が、私の後ろを見た。


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