となりに座らないで!~優しいバレンタイン~
えっ?
 これは、どういうことなのだろうか?
 全く、頭がまわらない。

 彼は、驚く事もなければ、逃げるわけでも無く、平然と笑顔を向けている。

 私はどうすればいい?
 
 手にしていた紙袋をギュッと握りしめたと同時に、


「こんばんは」

 彼の隣にいる女性が、軽く頭を下げ微笑んだのだ。


 人って不思議なものだと思う……

 「こんばんは」と、言われれば「こんばんは」と返す習慣が身についている。


 私も「こんばんは」と、無意識に返していた。


 すると……

「こちら、取引先の会社の方」と、彼が丁寧に手の先を私に向けて言った。


 一瞬、自分を紹介されている事だとは気付かなかった。


 だが、次の瞬間、全てが終わった……
 
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