となりに座らないで!~優しいバレンタイン~
 彼の隣りに立つ女性が、私に目を向け言ったのだ。

 「主人がお世話になってます」

 ……!!


 今、何て言ったの?
 誰の事?

 声に出したいのに、口が動かない……


 「それでは、また」と言う彼の声が遠くに聞こえた気がした。

 頭を下げて去っていく二人と反対の方向に、私の足は勝手に動き出した。


 ただただ歩き出す足に合わせ、頭の中が動き出す。

 あの女性は誰?
 主人て言ったよね?
 彼は結婚していたって事?
 私、付き合ってたんだよね?
 彼は、私を…… 置いて行っちゃった………

 何も言えず……
 何も出来なかった……

 どういうこと?って、聞けば良かった?
 追いかけて、問い詰めれば良かった?

 どうして、私が一人で歩いていなきゃならないのよ!
 何がどうなったのか分からないよ。


 気が付いたら、見覚えのない公園の中に居た。



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