となりに座らないで!~優しいバレンタイン~
 分かった事がある……
 彼は、頑固で絶対だ。
 彼は、二重人格いや三重人格かもしれない。
 彼は、かなり女性経験が多い。
 彼は、寝起きがすこぶる悪い。


 やっと起きた彼と、遅い朝食を兼ねてショッピングモールに向かった。ほとんどの持ち物を失った私の物を買いに出たのだ。

 とりあえず、二、三枚は着替えが欲しい。前から欲しかった、ベージュのニットワンピと白のワンピで悩み、ベージュを手にする。スカートもグリーンか黒かで悩みグリーンに、ニットもエンジとベージュと黒で悩み、ベージュに。
 形の違うものなどで悩み。三枚の服を手にしてレジカウンターに置くと、ドサッとその上に大量の服やスカートが……
 恐る恐る、置いた主の方を見上げると、涼しそうな顔をした彼が立っていた。

「これも、欲しかったんだろ? よく似あってたぞ」


「そうじゃなくて、こんなに…… いくらになると思うのよ!」


「支払いはこれで」

 彼は、私の言葉は無視して、カードを定員に差し出し。


 店のロゴの入った袋には、十五枚もの服やスカートが入っている。

 この人の感覚が分からない……

 「靴もいるだろ?」

 「コートもあった方がいいだろ?」

 「下着と、アクセサリーもだな」


 「もー! 無駄にお金使わないで下さい!」

 彼を睨むが……


「友里の物なんだから、無駄な金じゃない」


 
「だからって、使う金額が半端じゃないです!」

 金持ちの金銭感覚はさっぱり理解できない。


 彼の無駄遣いをなんとか抑えながら車に戻ったが、トランクも後部座席もこれ以上入らないくらいに、私の物で溢れていた。
 まあ、全て気に入った物で嬉しいくないと言えばウソだが、今後は、彼のお金の使い方を注意した方が良さそうだ。



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