となりに座らないで!~優しいバレンタイン~
 キッチンに立つ。カウンターの広さ、水回りといい使いやすそうだ。なんだか、料理をするのが楽しみになって来た。
 だが、何か物足りない。そう、食材も調味料もないのだ。
 彼が帰るまでにはまだ時間がある。

 またもやバックを持って、マンションを出た。


 近くのスーパーへ向かいながら、今から作れそうなメニューと食材を考える。ハンバーグぐらいなら作れるだろう。

 今夜のメニューと明日の朝食に必要な最低限の食材をかごに入れるが、何もないところから始めるには、それなりの量の買い物となった。

 買い物袋二つをさげマンションに戻る。今日一日でどれだけの買い物をしただろう?


 昼間買った腰に巻くタイプのエプロンをし、急いで夕食の支度にとりかかる。特別な物は作れないが、料理は好きだ。こんなに綺麗で広いキッチンで料理をしていると、なんだか楽しくなってくる。


 簡単な卵スープと付け合わせのグラッセ。ハンバーグの下ごしらえが出来上がると、玄関から、ガタガタと音がした。彼が帰ってきたようだ。

 慌てて玄関へと走った。


「お帰りなさいー」


 靴を脱いで顔を上げた彼が、そのままフリーズした……





 
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