となりに座らないで!~優しいバレンタイン~
 ハァハァ……
 
 こんな事になるとは思わず、張りきってヒールの高いブーツを履いてきてしまった事が悔やまれる。気持ちばかりが焦って、息が切れるばかりでスピードが上がらない。

 チラリと後ろを振り返るが、後を付けてきている様子もないので、丁度赤になった信号で足を止めた。

 なんだったんだろう?
 こんな時に、変な男にからまれるなんて……
 必死になって走ったせいか、少し、気持ちが落ち着いた気がする。

 信号が青になり、横断歩道を渡ろうと、その先を見た。

 ええーー!
 うっそー!!
 ここは何処?

 全く知らない場所だ。

 横断歩道を渡ろうとした足を止め、カバンからスマホを出す。とりあえず現在地を確認するしかない。アタフタしながら、スマホの画面をスライドした。

 やっと近くの駅を探し出したところで……


 「何やってんだ?」

 突然、背後からの声に、恐る恐る振り向いた。

 
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