モブ子は今日も青春中!
青と黄色を間違えました
体育祭、それは文化祭と並ぶ一大青春イベント。
兄ちゃんは3年生ということもあり、活躍しているようだ。背が高いから男子の中にいても目立つ。兄ちゃんに向けた黄色い声援も聞こえる。軍が違うから話すこともないけれど、楽しそうで何より。
そんな兄ちゃんが、午後の部、女子の熾烈な騎馬戦が終わった後で、髪を乱したままの私のところにやってきた。
「かなめ、ちょっといい?」
手には謎の青い布。よく見るとうちの軍のTシャツだ。兄ちゃんは黄軍なのに…なぜ?
各軍のTシャツ、軍Tは前日までに各自に配られるけど、着るのは最後の3年生全員リレーと、応援合戦、後夜祭のみである。後夜祭では彼氏彼女のTシャツと交換して着るなんていうこともあるみたいだけど、まだ後夜祭には早いし、兄ちゃんに彼女がいるなんて聞いていない。
「兄ちゃんどうしたの?」
私の隣にいた優里亜ちゃんが頭を下げると、兄ちゃんもそれに応えた。あれ?これってひょっとして、2人の出逢い?
そんな私の思惑もお構いなしに、兄ちゃんは私の方に向き直り、話を続ける。
「かなめ、朝、リビングから軍T持っていくとき、俺の黄色いやつ持っていっただろう?俺が行くときにはこれしかなくて。」
あ、あー!
そうか、私のミスか!
兄ちゃんが困ったように笑う。
「昼休みに会えなかったから。悪いんだけどできたら今のうちに教室に取りに行ってくれないかな?」
なんて、優しい兄ちゃんなんだろう。悪くないよ、悪いのは私だ。
優里亜ちゃん、うちの兄ちゃんおすすめだよ。
「ごめん、すぐに取ってくる!」
私は優里亜ちゃんと兄ちゃんを残し、走り出した。