モブ子は今日も青春中!

兄 ③


 以前と様子が変わった人と言えば、うちにも2人。兄ちゃんとお母さんだ。


 お休みの日の朝、少し早起きをしてパジャマのまま下に降りる。
 まだ誰も起きていないことを確認。
 暖房をつけ、お湯を沸かして、マグカップにポタージュを作る。

 息を吹きかければ湯気が揺らめく。
 ボーっと、録画した映画を観る。
 こんな時間が至福だと感じる。

「おはよ…。」

 兄ちゃんが目を擦りながらリビングに入ってきた。兄ちゃんもまだパジャマのままだ。

「おはよう。」

 私を見てにっこりと笑うと、兄ちゃんは私の座るラグまで真っ直ぐにやってくる。そしてそのまま、なぜか後ろからホールドする形で座る。

「…いやいや、兄ちゃん、何してんのさ。」

「なんか新婚みたいだなって思って。」
 
 兄ちゃんが、耳元でひそめく。

 一気に体温が上昇して、頬が熱くなる。
 
 兄ちゃんのスキンシップが最近過剰過ぎるんだ。兄ちゃん、そんな人でしたっけ?

「勉強がんばるからさ、クリスマスは2人で過ごそう?」

 いつも家族で一緒に過ごしていたじゃん!
「なんで、そんな恋人同士みたいなこと言うのさ!」

 ポタージュをこぼさないように気をつけながら、兄ちゃんと距離を取ろうと試みる。
 …が、あっという間に腰に手を回される。

「かなめだって、『兄ちゃん大好き』って言ってくれてたじゃん。そろそろ、自分の気持ち、認めたら?」

「いやいやいやいや、無理無理無理無理。だって兄ちゃんは兄ちゃんで、兄ちゃんだから兄ちゃんで。」

 混乱して目を回す私に『かわいい』と言って、兄ちゃんは私の頭にキスを落とした。

 あたまー!
 もう映画の内容どころではない。というか、私、そうだ、映画を観ていたんだ。忘れていた。

 困惑が続く中、兄ちゃんがここぞとばかりに、私の顎に手をそえる。
 
 このままでは、まずい!!…と思ったときだった。

「おはよう、かたる、かなめ!!」

 勢い良くリビングのドアが開かれる。
 
「今朝もいい天気ね!!」

 
 大げさなくらい張り上げられた声に、呆気に取られる…。お母さんだ。


 私と兄ちゃんの間をわざと通り、カーテンを全開にする。

「母さん…、邪魔するの、やめてくれない?」

 兄ちゃんがあの完璧な笑顔で、お母さんに笑いかける。

「かたる…、あんたがどう思おうと、かなめもかたるも大事な私の子どもなの。私の目が黒いうちは、好き勝手させないわよ!!」

 お母さんもそれに応戦する。笑顔が怖い。上手く笑えてないよ、お母さん。

 お母さん、なんだか明るくなったなぁ。つきものが落ちたというか、スッキリした感じ。

「…まあまあ。」

 私が間に入るも、「良くないよ!」と2人から同時に非難され、私も口を尖らせるのだった。

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