モブ子は今日も青春中!
第二章

平凡と平坦はノットイコールでした


 モブにも人生がある。ゲームには描かれないところで。平坦とは言えない人生が…。

「あかん…。もう無理やろ、これ。積んだわ…。」

 エセ関西人、三津谷かなめはある日の放課後、机に突っ伏していた。
 夏休み明けの確認テストがこんなに難しいなんて。
 家で兄ちゃんに勉強を見てもらったのに。

「かなめちゃん、大丈夫?補習終わるまで待っていようか?」

 …ああ、優里亜ちゃんから後光が見えて、アホが炙り出される。

「あんた、どうしたら英語でこんな点が取れるのさ。私はバイト行くけど…がんばれよ。」

 なみ、素直でいい奴だな、おい。

 英語の確認テストの成績が芳しくなかった私は、放課後の補習を担任から言い渡された。
 
 補習が終わるまで待っていてくれると言う優里亜ちゃんの言葉を丁重に断り、なみと優里亜ちゃんに別れを告げ、私は補習が行われる視聴覚室へと向かう。

 そう言えば、優里亜ちゃんは攻略対象たちと出逢い、愛を深めているのだろうか。仲良くなって数週間が経ったが、未だに接触している様子が見られない。モブキャラのいないところで、ゲームは進んでいるのだろうか?

 実は残念なことに、私はどんなイベントやハプニングがゲーム上で起きるのか、まったく覚えていない。
 登場人物のことはよく覚えているのに…だ。
 まったく残念なモブである。まあ、その分フレッシュな気持ちで今を楽しめるという訳で…。


「遅いわよ、三津谷さん。補習はあなたと、B組の蓮見くんだけなんだから。」

 ドアを勢い良く開けた私は、だだっ広い視聴覚室の中から、英語教師と男子生徒の突き刺すような視線を浴びる。

「…ったく、早くしろよ。」

 ははははは…。蓮見帯斗と2人だけかい。
 果たして私は今を楽しめるのでしょうか?

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