モブ子は今日も青春中!

俺様 ①



「おい、お前。いつまでかかってるんだよ。」

 椅子だけを後ろ、私の方に向けた蓮見くんが苛立って私のプリントを覗く。

「うぅ…だって。…ごめんなさい。」

 英語教師は部活動の生徒に呼ばれて、席を外してしまっている。『課題が終わったら2人で職員室まで持ってきて。』と、簡単に2人の連帯責任を決めて出ていってしまった。

「あと5分で終わらせろよ。」

 テスト当日にサボったからという理由で補習を受けている蓮見くんと、夏休み中、兄ちゃんに心配されるほど、ボーっと恋愛ゲームや転生後の世界についてばかり考えていた私とでは、置かれている状況が違うようだ。


 そもそも蓮見くんは、ゲームの登場人物だ。蓮見帯斗、いわゆる高スペックキャラ。勉強も運動もできて、顔も良い。高校1年にして、会社も立ち上げて軌道に乗せているらしい。
 『俺様キャラ』にはなるようにしてなったのかもしれない。だって常に高いところから見下ろす立場にいるんだもの。彼に歯向かえる人間は早々いない。


「お前、よくそれでうちの高校に入れたな。」

 おっしゃる通り…。私は努力のモブなので、気を抜くとこんなもんでございます。でも…

「がんばるから!!」

 私が気合いを込めて蓮見くんを見上げた。
 一瞬たじろぐ蓮見くん。

「ごめん、もうちょっとだけ…待ってて。」
 
「…いいよ、別に。」

 蓮見くんがスマホを取り出し、前に向き直った。

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